新型コロナウィルスと経済予測

吉田繁治氏 ビジネス知識源 リンク 
<425号:予想外の、新型コロナウイルスショック>
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■11.世界に対する中国の工場の製造シェア
中国の製造業は、2015年ですでに、日本の製造業の4.5倍でした(名目GDP)。以下は、同年の国別の製造業です(名目金額:国連の集計)。
(1)中国  4.5兆ドル(製造物価を考慮すれば数量で10兆ドル)
(2)米国  2.0兆ドル(IT関連と自動車が多い)
(3)日本  1.0兆ドル(1990年からほとんど増えていない)
(4)ドイツ 0.8兆ドル
(5)韓国  0.5兆ドル
(6)インド 0.5兆ドル
リンク
中国の製造出荷価格は1/2から1/3くらいですから、数量では10兆ドル分以上でしょう。
製造額が大きな電気3品種と他の、世界シェアは以下です(電気3品種は2019年、他は、2011年)。中国は家電・電子製品ではおよそ50%になっています。自動車でも30%です(日本、欧州、米国のメーカー進出が多い)

            中国  他の世界
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(1)スマートフォン  65%   35%
(2)パソコン     45%   55%
(3)テレビ      40%   80%
(4)化学繊維     66%   34%
(5)自動車生産    30%   70%            
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比較)人口数のシェア  20%   80%
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世界人口(70億人)に占める中国(14億人)のシェアは20%です。(注)日本の人口は、世界の1.8%の1億2600万人。米国は4.7%、西欧は5.7%です。日本の10倍以上の中国人が、いかに多いかわかります。

中国が、2000年代に「世界のサプライチェーンの製造基地」になっているということは、中国生産シェアから了解できます。中国で、GDPの実質増加率が0%(2020年:1-3月期予想)になるということは、中国を拠点にした世界のサプライチェーン製造業の生産・出荷の増加がなくなり、世界GDPが、0%の成長に下げることと同義です。人口1100万人の武漢は、世界の巨大工場が集まった工業都市です。

新型コロナウイルスの影響による操業の停止と縮退は、世界のGDPを減らしてしまうのです。
「いつまで中国と世界で感染が増加するか」は、2020年の世界経済にとって、金融(マネーの増刷)より大きな影響を与えます。中央銀行の増発マネーは、売上減からの不足資金の貸し付けと、金融投資に回るものだからです。
2003年のSARSでの、世界経済の影響は400億ドル(4.4兆円)と小さかった。影響は、主に中国でした。
今回の新型コロナウイルスでは、生産・販売の、直接的な減少が、すでに、3倍から4倍の1500億ドル(16兆円)にはなるでしょう。この減少は、心理的に、経済の他の要素に波及します。たとえば、設備投資の減少です。そして倒産、交通、消費額の減少です。感染症は、金融より、人に与える心理的な影響が大きい。
中国が基地のサプライチェーンが増えているので、日米欧での波及は4倍くらいの6000億ドル(66兆円)にはなるでしょうか。中国に比べ生産財の物価も3倍くらいは高いからです。6月くらいまで長期化すれば倍数は上がります。

【長期化すれば・・・】新型コロナウイルスの蔓延が、仮に8月まで続くと、株価下落、世界の、1京円を超えるシャドーバンク部門の不良債権の顕在化になり、第二のリーマン危機になって行くでしょう。
中央銀行は、中国政府のように「マネーを投入」する選択肢しかなく、株価、社債価格の維持、金融機関のデフォルトを避けるための不足マネーの投入を図るはずです。
しかし、これは金融機関の信用拡大を促し、景気上昇をするマネーではない。マネー不足の、短期的充填です。

【波及と回復】中国から日本に輸入される車の部品は、3470億円です(JETRO:2018年)。輸入部品では、中国製が3割を占めます。日産以外の他のメーカーの自動車生産にも影響が及びます。2011年3.11の、東日本大震災からの、製造のサプライチェーンへの影響に似ています。
今日の調査では、大阪の生産・卸・小売企業の全体では、16%の会社が影響を受け、44%が近々のマイナスの影響を予想しています。これは全国、全地域に共通するでしょう。日本と中国の輸出入(約40兆円/年)は、対米(30兆円/年)より大きくなっているからです。

ただし新型肺炎は、経済外の原因のものです。6か月以上に長期化しなければ、金融のような拡大波及はなく、終息後の回復ははやいでしょう。信用収縮が連鎖し、下落が次の下げを呼んで、3回目の低下で底値に至るパターンが多い株価バブル崩壊や、債券の不良化(価格下落)とは違います。アリの一穴から始まることもある金融危機は、金融機関の、自己資本喪失による、信用収縮の連鎖から、拡大した波及をします。

2020年の1月までは思ってもいなかったところから、金融と経済を収縮させる、経済外の事象が生じました。天候でも不確実なことが増えています。資源生産の豪州では、あの森林火災が、記録的な豪雨のあった地域では、おさまったようです。根拠はなく、この上、大地震は起こらないとは思っているのですが・・・。

参照:http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&t=6&k=2&m=353869

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