デニソワ人由来の強力な免疫系遺伝子を同定

デニソワ人について様々な見解が出始めています。
 そんな中、現人類で免疫力の高い人は、デニソワ人の免疫力が残っているのでは?という説が出ています。確かに元から免疫力の高い人はいますが、そんな大昔からの祖先のシステムが残っていると思うと感慨深いですね。
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適応力が高い免疫システムが備わっている人は、「デニソワ人」と呼ばれる絶滅した初期人類から遺伝子を受け継いでいる可能性があると、オーストラリアのガルバン医学研究所で移植免疫研究室を率いるShane Grey氏らが「Nature Immunology」9月18日オンライン版に発表した。

 ネアンデルタール人と近縁関係にある旧人のデニソワ人は、現生人類の祖先が、約5万年前にアフリカを出てパプアニューギニアやオーストラリアに移動した際に交雑したとみられている。

 Grey氏らは今回、子どもの一人が重度の自己免疫異常や炎症状態にあった複数の家族の遺伝子を解析した。その結果、同氏らは4つの家族に共通した遺伝子変異を発見したが、この変異は炎症性疾患を引き起こすには十分なものではなかった。しかし、これらの家族の免疫細胞は、その他の個人のものよりも、より強力な免疫応答を引き起こすことが分かった。

 今回発見された「I207L」と呼ばれる遺伝子の突然変異は、シドニー出身の家系やメラネシア人、マオリ族、ポリネシア人などの先住民の家系でよくみられるものだという。「一般にまれな遺伝子型が一部の集団で頻度が高く、ポジティブな遺伝的特徴を示すという事実は、そのことがヒトの健康に有益であることを意味する」とGrey氏は説明している。

 Grey氏によれば、これまでの研究でも、絶滅した人類種から現生人類が獲得した遺伝子変異が発見されており、高地への環境適応力やウイルスへの抵抗力の獲得に有利に働いた可能性が示されていた。しかし、実際に機能している遺伝子変異は同定されていなかったという。

 そのため、Grey氏は自身の研究について、「機能する単一の遺伝子変異を初めて同定したもので、その変異がヒトの免疫系の進化に有益な影響を与えたことを示唆している」と説明。「現生人類は、デニソワ人から免疫応答と炎症反応を強める遺伝子変異を受け継ぎ、その一部は病原体からヒトを守る機能を果たしたものとみられる」と結論づけている。

 Grey氏らが突き止めたこの遺伝子変異は、シベリアの洞窟で発見された5万年前のデニソワ人の少女の指節骨DNAでも発見された。しかし、同じ洞窟で見つかったネアンデルタール人のDNAには見つからなかったことから、この変異は、約40万年前にデニソワ人とネアンデルタール人が分岐した後に生じたものだと考えられるという。

 なお、マウスを用いた実験では、I207L変異はコクサッキーウイルス株に対して強い免疫応答をもたらしたのに対し、この遺伝子変異がないマウスでは免疫応答は弱いことが分かった。これらの結果を踏まえ、Grey氏らは「デニソワ人のDNAに発見された遺伝子変異とその他の遺伝子変異が、さまざまな病原体に応答するよう免疫系に働きかけている可能性が示唆された」と述べている。

参照:http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&t=6&k=2&m=352745

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