生物の寿命はDNAに書き込まれている。それによると人間の寿命は38年

自然のままなら、人間の寿命は約38年──DNAの解析でさまざまな種の寿命を推測する新手法で導き出された数字だ。

すでにだいたいの寿命がわかっている種の遺伝子研究から推定したところ、絶滅したケナガマンモスの寿命はおそらく60年ほど、シロナガスクジラに次いで大きいホッキョククジラは2世紀半以上長生きできることが判明した。

12月12日付の科学誌サイエンティフィック・リポーツに発表された論文で、研究者たちは動物が年を取るにつれてDNAがどのように変化するかを調べた。そして、このDNAの変化は寿命と関連していることを突き止めた。

<老化の謎>

老化のプロセスは、生物医学や生態学の分野で非常に重要なテーマだ。動物は年と取るにつれ、生体機能が衰えていき、やがて寿命を迎える。だがこれまでは、その年数を特定するのは難しいことだった。

その点、生物の青写真であるDNAは、老化と寿命に関する洞察を得るうえで最適なものだ。しかし、寿命の差を決定づけるDNA配列を見分けることは、これまでは不可能だった。

脊椎動物の寿命は種によって大きく異なる。ハゼの仲間は8週間しか生きられない小さな魚だが、ニシオンデンザメは400歳を超える個体も見つかっている。

野生動物の寿命を知ることは、野生動物の保護管理にとって重要だ。絶滅危惧種の場合、寿命に関する情報があれば、どの個体群が存続可能であるかを判断するのに利用できる。漁業のような産業でも、寿命がわかれば漁獲量の上限を決めるのに利用できる。

しかし、大部分の動物は寿命不明のままだ。ほとんどの場合、寿命の推定は飼育下にある少数の個体を使って行われており、死亡時の年齢が不明であるものも多い。寿命が長い種の場合、研究者より長生きする可能性もある。

<「DNAの変化」から年齢を推定>

しかしここ数年、DNAメチル化と呼ばれるDNAの特殊な変化を使って動物の年齢を特定する「DNA時計」の開発が進んできた。

DNAメチル化は、遺伝子の配列を変えることなく、遺伝子の活性・不活性をコントロールする。特定遺伝子のDNAメチル化は、霊長類を含む一部の哺乳類の最大寿命と関連しているという研究結果もある。

もっとも、動物の寿命を推測する手段としてDNAメチル化を用いた研究はこれまで存在しなかった。

今回の研究では、これまでの研究で解析され、オンラインデータベースで公開されている252のゲノム(DNAの全塩基配列)を使用。これらのゲノムを、別のデータベースにまとめられている既知の動物の寿命と比較した。

このデータから、42の遺伝子でDNAメチル化が起きる場所に着目すれば、脊椎動物の寿命を推測することが可能だとわかった。この手法なら、長寿の種や絶滅種にも応用できる。

<絶滅種>

研究の結果、世界で最も長寿な哺乳類と考えられているホッキョククジラの寿命は268年と推定された。これまでに確認されている最も長命だった個体と比べて57年長い。

絶滅種のケナガマンモスの寿命は約60年だった。現生種のアフリカゾウもほぼ同じ約65年だ。

ガラパゴス諸島のピンタ島に分布していた絶滅種ピンタゾウガメの寿命は推定120年。1971年に発見された最後の個体ロンサム・ジョージは、2012年に推定112歳で死亡した。

現生人類の絶滅した近縁種であるネアンデルタール人とデニソワ人の場合、最大寿命はたった37.8年だった。

一方、DNA分析による現生人類の「自然」寿命も38歳。この数字は、初期の現生人類に関する複数の人類学的な推定と一致している。医学や生活様式の進歩によって現代人の平均寿命はDNAに書き込まれた寿命よりはるかに延びたらしい。今回の研究の例外的存在と言えるだろう。

今後さらにさまざまな動物のゲノム解析が進めば、今回の手法で寿命を推定することができる。その情報は、絶滅が危ぶまれる種を救う大きな手掛かりになる。

参照:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191225-00010002-newsweek-int

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