人間の赤ちゃんは共同保育をされるように生まれてきた

人間の赤ちゃんは「泣くのが仕事」と言われるくらいよく泣きます。
しかし、人間にとても近い生き物である霊長類(ゴリラ、チンパンジー、オラウータン…)の赤ちゃんは滅多に泣かず、とても大人しいようです。
基本的に猿は集団であってもお母さんと子どもは一対一の関係が多く、赤ちゃんに異常があると(赤ちゃんが泣かなくても)お母さんはすぐに気が付くそう。
人間の赤ちゃんが大きな声で泣くのは、猿よりもさらに「集団で子育てをすることを前提に生まれてきているから」という分析があったので紹介します。

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■オランウータンの赤ちゃんは静かで泣かない
サルとヒトの子育てで、顕著な違いは、 サルの赤ちゃんは泣きませんが、ヒトの赤ちゃんは泣くことです。オランウータンの赤ちゃんを森の中で観察していていつも感心するのは、 赤ちゃんがすごく静かで、お母さんの邪魔にならないことです。お母さんは、朝起きてから食べ物(果実や葉)を探して一日を過ごします。夕方になると毎日違う木の上で、枝を折り畳んでベッドを作って寝ます。赤ちゃんはこの間、ずっとお母さんのお腹に抱きついて、自分のペースで母乳を飲み、昼寝します。ヒトみたいに、泣いて駄々をこねることがないんですよ。
その半面、オランウータンやチンパンジーの赤ちゃんを、 ベッドの上であおむけに寝かせると、ジタバタしてちっとも落ち着きません。個体差はありますが、ぬいぐるみや毛布など「抱きつけるもの」を与えると、ようやくおとなしくなります。常にお母さんに抱きついていますから、「いつもの安心できる状態」に戻ろうとジタバタするわけです。

ヒトの赤ちゃんはベッドであおむけに寝かされても、周囲の大人にほほ笑みかけたり、機嫌よく遊んだりできますよね。これは、お母さんに常に抱きついている生活をしなくなった証拠です。
母親から離れて過ごすようになったヒトの赤ちゃんは、 「泣く」というムチと、「ほほ笑み」というアメを使いこなして、より多くの大人の注意を引きつけ、より長い時間世話してもらえるような環境をつくりあげることができるように進化してきたといえます。

ヒトの祖先は、チンパンジーやゴリラたちが住んでいる森から、肉食獣が歩き回っているサバンナに出て行きました。森林が少なくなるなど環境が変動したからと言われています。サバンナで赤ちゃんが泣くと、群れが隠れたり逃げたりするところがなく、とても危険です。大人たちはあわてて赤ちゃんの世話をしたことでしょう。
つまり、 「泣くことで、お母さん以外の大人の注意を引きつけて、世話をしてもらえた」メリットが、非常に大きかったのです。

この時期の人類は、サバンナに出たため、生存率が著しく下がりました。短い期間でとにかく子どもをたくさん産まないと、群れが維持できなかったのです。でも、小さな子どもを同時に何人も育てるのは、母親一人では不可能です。だから、他の大人に育児を手伝わせるように、赤ちゃんが進化した、というわけですね。

■人類誕生の頃から、共同保育が始まっていた
人類の化石には「共同保育」の特徴が見つかります。人類誕生の時期から、「直立二足歩行」を開始していました。直立歩行を始めたのは、「食物を運搬するため」だったとする仮説があり、近年多くの人類学者に支持されるようになってきています。
二足で歩くと両手に大量の食べ物を抱えて運ぶことができます。ヒトの祖先は、食物を集めて歩いて持ち帰り、家族や仲間で分け合って食べていた。食べ物を持って帰ることで、母親の栄養状態が良くなります。栄養状態が良くなると、ヒトにだけ、あることが生じます。
ヒトは授乳中であっても、栄養状態が良ければ、妊娠できるんです。早い人では1年以内、長くても2年ほどで、生理が再開しますよね。年子や2歳差で子どもを産むことができるのはヒトだけなんですよ。
他の霊長類は、授乳中は生理が来ない、つまり排卵が起きません。だから、ゴリラやチンパンジーなどのオスは、他のオスの赤ちゃんを育てているメスに自分の子どもを産ませるために、その赤ちゃんを殺してメスの授乳を中断させることがあるくらいです。
逆に言えば、お母さんをサポートしてくれる人がいたからこそ、「出産後、短期間で排卵が戻るくらいお母さんの栄養状態が良かった」のです。

みんなで共同保育をする恵まれた環境を提供できた群れのお母さんが、どんどん子どもを産むことができ、より多くの子孫を残すことができた。たくさん産んでみんなで育てるのは人類生存の有効な戦略だったのです。

現代のお母さんは、サポートを受けられない人も少なくありません。それは、 ヒトという種にとって想定外であり本来あり得ないことです。

参照:http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&t=6&k=2&m=352066

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