日光浴をするとインフルエンザになりにくい:紫外線により皮膚の免疫細胞が刺激されて活性化し、感染を防ぐ

◇日光浴をするとインフルエンザになりにくい

 インフルエンザが流行しています。国立感染症研究所による最新のインフルエンザ流行レベルマップ(12月5日~11日分)によると、栃木、沖縄、岩手、富山、福井の順で、定点医療機関あたりの患者報告数が多く、全国でこの調査対象の1週間にインフルエンザのため医療機関を受診した人は、約18万人に上ると推計されています。最近は春夏のインフルエンザが話題になることもありますが、大規模な流行は基本的に冬に起きます。さまざまな理由が考えられますが、最近指摘される理由の一つが「冬は体を日光に当てる時間が減るから」です。よこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニック(神奈川県横須賀市)の奥井識仁院長に詳しく解説してもらいました。【医療プレミア編集部】

 日光浴をすることで、インフルエンザを含む風邪をひきにくくなることは、さまざまなデータが裏付けています。例えば、3500人の子供を対象に、秋と冬に12回、紫外線を浴びさせる実験をしたデータでは、紫外線を浴びなかった実験の前シーズンに比較して、風邪の発症が66%も減少したと報告されています。これは一言で言うと、紫外線により皮膚の免疫細胞が刺激されて活性化し、感染を防いだからと考えられます。

 ◇太陽から手に入る“ホルモン”ビタミンD

 その背景には日光を浴びると、私たちの体内で活性化する多数のホルモンの存在があります。その一つが、骨の健康を維持するのに必要なビタミンD。ビタミンDは糖尿病やアルツハイマー病の予防効果に関しても研究が進められており、その多彩な作用から単なる栄養素というより、ホルモンに近い物質とも考えられています。魚介類や卵などの食品にも含まれていますが、皮膚の細胞が紫外線を吸収することで、コレステロールから作り出すこともできます。日光を浴びて体内で合成されるビタミンDは、私たちの体の必要量のおよそ半分に達します。

 2014年、オーストラリアのクイーンズランド工科大学の研究者たちは、「高齢者に1年間、高用量のビタミンDを毎月1回注射(60000IU/月)すると、感染症治療のための抗生物質が不要になるか否か」という調査を行いました。調査対象全体では、ビタミンD投与グループは抗生物質が不要の人が多かったが、有意差はなし、という結果でした。しかし対象者を70歳以上に限ると、ビタミンD投与グループは、抗生物質が必要だった人が47%も減少し、有意差のある結果が出たそうです。インフルエンザには抗生物質(抗菌薬)は効果がありませんが、ビタミンDの免疫活性化機能の一端が分かります。

 メラトニンというホルモンも日光に関係しています。朝、太陽の光が目に入ると、体内時計をつかさどる網膜と直結している脳の視交叉上核というところが光に反応してメラトニンを製造します。作られたメラトニンはその日の夜に分泌されて、快適な睡眠を作ります。睡眠を十分取ることは、もちろんインフルエンザの予防になります。

 脳をはじめ、体内のあちらこちらに存在するセロトニン神経は、日光の刺激でセロトニンを分泌します。セロトニンは、体温調節・摂食行動・情緒など主に昼間の生活を支え、これもインフルエンザから体を守ります。

 ◇男性ホルモンの分泌も増加

 さらに日光浴で性ホルモンの分泌も変化します。米国ハーバード大学のチームが2300人ほどの男性を調査したところ、ビタミンD血中濃度の高い男性は、ビタミンD不足の男性よりもテストステロン(いわゆる男性ホルモン)が高かったと報告しています。テストステロンには抗炎症作用があることが確認されていますので、風邪を引きそうな体を支えるホルモンの一つといえるでしょう。

 ビタミンDやホルモンの分泌を増やすには、1日15分程度の「日光浴速歩き」でよいでしょう。冬は紫外線の量も少なくなるため、昼間に少し寒さを我慢して顔と腕を服から出して、ちょっと速く歩くようにすることをお勧めします。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161225-00000010-mai-soci

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