東京オリンピック暑さ対策…サマータイム、海外ではさまざまな健康リスクが報告されています。夏季に時計を1時間進めることは、睡眠不足を引き起こし、さらに心血管や精神面に障害をきたす可能性

東京オリンピックの暑さ対策として、委員会がサマータイム制(英語表記: Daylight Saving Time。以下DST)を提言し、政府が検討を指示していますが、実は海外ではさまざまな健康リスクが報告されています。夏季に時計を1時間進めることは、睡眠不足を引き起こし、さらに心血管や精神面に障害をきたす可能性があります。

アメリカ神経学会の2016年の報告では、フィンランドにおいてサマータイム(DST)導入開始から2日後に脳卒中発生率が約8%高まったことが発表されています(AAN’s 68th Annual Meeting,April 15 to 21, 2016)。ちなみに、がん患者では脳卒中の発症率が約25%も高くなり、さらに65歳以上の人では発症率は約20%高くなりました。

アメリカのコロラド大学の報告でも心臓発作が21%も増加しています(Open Heart,30 Mar 2014;1,e000019,1-5)。アラバマ大学バーミンガム校の2012年の研究では、DSTによって心臓発作のリスクが10%増加することが報告されています。

これらの機序や明確な原因はあまりわかっていませんが、時間がずれることで睡眠障害、概日リズムの急な変化、異常な免疫反応がこれらの要因として考えられています。

スウェーデンの研究でも、DSTに切り替えてからの平日3日間にやはり心臓発作リスクが増加することを報告しています(N Engl J Med 2008; 359:1966-1968)。他にも、カナダでは交通事故が増えたこと(N Engl J Med 1996; 334:924-925)、アメリカ・ミシガン州では職場でのケガが増えたこと(Journal of Applied Psychology, 94(5), 1305-1317)、ボストン医科センターでは体外受精での流産が増えたこと(Chronobiol Int. 2017;34(5):571-577)なども報告されています。

DSTによるうつの増加についても各国が発表しています。デンマークの研究では、DST導入後にうつ発症が11%増加したことを報告しています(Epidemiology, May 2017,Vol.28,Issue3,346-353)。オーストラリアの研究では、DST開始後に男性の自殺率が上昇することがわかっています(Sleep and Biological Rhythms,Jan 2008, Vol6, Issue1,22–25)。ペンシルベニア州立大学で行われた2012年の研究では、DST開始後、労働者の生産性が低下したことを発表しています(Journal of Applied Psychology 2012, Vol.97, No.5, 1068-1076)。

さて、今回のサマータイム制度導入の際、日本では早めに終業することによって電力消費のピークをシフトできるとして検討されていますが、実際に独立行政法人・産業技術総合研究所によるシミュレーションでは、14時台の電力が抑えられても、帰宅によって16時台で家庭電力が増加するため、結局は需要は伸びる可能性があるそうです。

アメリカ・インディアナ州でもDST後は住宅電力の需要を約4%増加させたことを発表しています(http://www.nber.org/papers/w14429.pdf)。オーストラリアでもDSTは決して電力エネルギー量を低下させていません(Journal of Environmental Economics and Management,Vol.56, Issue3, Nov 2008,207-220)。

海外の良い部分はマネせずに、悪い部分ばかり追随していく日本。このサマータイム制導入に限らず、私は日本の行く末にとても懸念しています。

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