カラスの推論能力は人間の7歳児並み

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物忘れが激しく、記憶力が悪いことを「鳥頭」といい、鳥といえば「脳みそが小さく、頭が悪い」というイメージが一般的になっている。しかし認知力と認識力を比較すると、カラスやオウムはかなり高いレベルにあるようだ。

 ドイツ・ルール大学ボーフムのオヌル・グンタークン教授とオーストリア・ウィーン大学のトーマス・バニャー教授によると、これらの鳥類は論理的な思考が可能で、鏡に映る自分の姿を正しく認識したり、他の動物などに共感したりすることができるという。

 また目の前のえさをすぐに食べたりせずに保管したり、道具を利用したり、推論する能力も持つ。

 哺乳類の認知力は多層構造の大脳新皮質によって制御されている。一方、鳥類の脳には多層構造の大脳新皮質が存在せず、脳そのものの重量もかなり少ない。ではカラスの「賢さ」はどこか生じるのだろうか。

 教授らが膨大な脳神経解剖に関する研究結果を分析した結果、哺乳類と鳥類とでは脳の構造が大幅に異なるものの、似通った部分もあることが判明した。

 例えば、生命の維持に関わる重要な機能は同じく前頭葉で制御され、哺乳類、特に霊長類の大脳皮質に多く存在する神経幹細胞と同様の性質を持つ細胞が存在している点だ。

 教授らはこうした共通点について

(1)はるか昔の共通する祖先から受け継いだ。
(2)進化的に同じような困難に直面してきたために、それぞれ独自に同様の機能を発達させた。

という、2つの推論を立てている。

 今回の研究で確実にわかったのは「認知能力には多層構造の大脳新皮質は必要ない」ということだという。また知的能力の高さイコール脳重量でもない。

 なぜならサルの平均脳重量は275グラムから500グラムだが、鳥類の平均脳重量は5グラムから20グラム程度しかないからだ。

 この総説は2月1日発行の「トレンド・イン・コグニティブ・サイエンス」に掲載されている。

 また3月4日付の英Daily Mailによれば、ニュージーランドのオークランド大学による最近の研究でカラスが人間の7歳児程度の推論能力を持つことが明らかになったという。

 その実験はイソップ童話『カラスと水差し』をより難題にしたものだった。『カラスと水差し』は水差しの水面にくちばしが届かなかったカラスが、石をひとつずつ落として水嵩を増やし最後には水を飲むことができたという話。

 実験では餌の入っている容器や容器内を満たす物質、投下する物体をカラスに選ばせた。カラスはその複雑なタスクを乗り越え、みごと餌をゲットできた。

 このように鳥類などほかの動物の脳の研究が進歩すれば、哺乳類の脳に特徴的な大脳新皮質を理解する手助けになる。今後の発展が楽しみだ。

 

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