日本では教育学科をでていればだいたい教員資格をとる事ができるため、教員のスキルは落ちる一方。 教育先進国フィンランドとの違いはなにか。
————————————
フィンランドの教師の給料はかなり安いという。しかし彼らのスキルは高くて教育熱心だという。その秘密は恐らく5つある。
■教師になるのが難しいリンク
フィンランドで教師になるにはまず、教育学部の教員養成学科に入学する必要がある。 志願者はまず全国統一の筆記試験がある。 筆記試験の内容は、教育5分野の専門書を読んで基本事項のチェックとテーマのあるエッセイ。 つまり教育学部に入る前に既に教育学を勉強していないといけない。 この段階でまず、約8000人の志願者が3000人に絞られる。 次に各大学で、コース別(小学校担任か、中学以上の教科担任)で、筆記試験が行われて、そこでまた志願者が千人程度まで絞られる。 最後は個人面接とグループディスカッションで、6人の試験官が独自に採点した結果を集計して、数百人の合格者を決める。入試倍率は13倍程度だ。
■毎年行われる教育実習
そして教育学部に入るのも難関だが、さらに1年生の時から毎年数週間の教育実習があり、実際に教育現場で子供に触れながら教育学を学ぶ。 フィンランドの教育学部では、1年生の時から毎年教育実習に出される。 教育学部1年生から、3~4週間の教育実習があり、最初の課題は生徒1人1人の観察。 最終学年5年生の教育実習は、実際に授業を担当する実習で、期間は1ヶ月が2回。 つまり教員資格を取った瞬間にはもう、かなりの教育実習を積んでいて、子供への対処もかなり経験しているわけだ。
■教師は3~5年契約で、学校が採用するリンク
フィンランドの教師は、給料が安いのにスキルが高い。 その一つ目の理由は、教員資格を取るのが難しいことにある。
教員資格を取るには教育学部などに5年以上通い、 修士号を取ることが条件だが、教員養成コースに入学するのが難関。 毎年約8000人の志願者があるが、教員養成コースに進めるのは数百人だけだ。さらに教員養成コースでは毎学年、数週間以上の教育実習が行われ、プロの教員になるためのトレーニングを積むし、教師になったあとも大学に通い、様々な研修プログラムで、スキルを磨くのだ。
そしてもう一つの理由は、市場原理によって、悪い教員はドンドン淘汰されていくせいだろう。 フィンランドの学校はほとんどが公立だが、教員の採用は、学校単位で行われる。 つまりフィンランドでは教師を雇うのは学校であり、校長や学校のスタッフと保護者代表が採用委員会を作り、面接を行って教員を雇うのだ。 公立学校の教員は地方公務員になるのだが、教員の契約は3~5年契約で、 給与額も学校ごとに決められるから、働きぶりが良くなければ契約は更新されない。 また万が一、問題を起こす教師がおれば、保護者から校長に連絡が行き、校長は自治体の教育委員会に申請すれば、その教員をクビにすることもできる。
つまり教師が学校側が求める仕事をキチンとできなければ、せっかく教員資格を取っても仕事がなくなるのだ。
■市場淘汰で教員のスキルアップ
フィンランドでは1995年に大きな教育改革が行われて、学校の裁量権や教師の裁量権が大幅に認められるようになった。 それまでは日本のように事細かに指導内容を国が決めていたが、最低限達成すべき事だけ決めて、あとは教師それぞれのやり方でやって良いことになった。
また生徒の評価は、単なる知識の確認テストではなく、エッセイやレポートなどの作文を元に、生徒自身の習熟度を評価する方式になった。 そのため、いかに子供の「やる気」を引き出せるかが教師の主な仕事になり、そのために様々な工夫が必要になった。 なので教科書や教材などは全て教師1人1人が自由に選んでよくなり、 教科書出版社もこぞって良い教科書を作り始めた。
フィンランドの場合、教科書の検定制度はないので、あっと言う間に教科書はカラフルになり、子供の興味を引くような内容になったという。
その結果、教え方のうまい教師は、契約期間が終わると給料の良い学校に引き抜かれ、やる気のない教師や良くない教師は保護者から校長などに通報されクビになるようになった。 そのため、国や自治体、企業などが提供する教員向けの研修プログラムは人気になり、また複数の指導資格を持っていると就職に有利なため、大学を卒業後も大学に通い、新たな資格取得を目指す教員も増えた。
つまりフィンランドの教師には自由に授業を行える大きな裁量権が与えられたが、仕事のコストパフォーマンスが良くなければ、職を失ってしまうリスクも課せられた。
そのため教師には日夜スキルアップしないといけない、強烈なインセンティブが生まれたわけだ |