「【つくられた貧困】格差広げる所得再分配」-お上がつくった貧富の格差-

子供の貧困、すなわち子育て世代の貧困は何故生まれたのか。

「男が外で稼ぎ、女は家を守る」という観念が、女性の労働に限界をつくり、働くことが損になるという歪んだ思想を生んだ。

働くこと、誰かの期待に応えることが生活に充足をもたらす社会を実現するためには、歪んだ制度を突破していかなければならない。

以下、引用。

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【つくられた貧困】格差広げる所得再分配
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 日本で貧困といえば、1980年代は高齢者の問題だったが、今は子どもの貧困が深刻だ。

 背景の一つに、親世代の雇用環境の悪化がある。15~24歳の非正規労働者の割合は90年は男女とも2割だったが、2010年は男性の4割、女性の5割に上っている。新卒者がなかなか正社員になれていない。90年代半ばから政府が進めた規制緩和で、非正規労働者が増加したことが原因だ。

 さらに「非正規=低賃金」という日本固有の構図がある。他の先進国は同じ仕事ならば正規、非正規の時間給の差は15%程度だが、日本は30~40%。しかも、日本の最低賃金は時給798円(2016年度の平均)で、主な先進国19カ国で最低レベルだ。

 この原因は「男が外で稼ぎ、女は家を守る」という性別役割分業を基にした制度設計にある。

 女性の労働に「103万円の壁」を作り出した配偶者控除や、「130万円の壁」を設けた年金の第3号被保険者制度や健康保険制度が、「働くのは損」と労働参加をゆがめ、家計補助のパートで良しとし、女性の低賃金労働を許す要因となっている。「ひとり親の8割が働いているのに、5割が貧困」という理不尽を生む要因となっている。

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 もう一つ、本来は高所得層から税や社会保険料を取り、年金や手当、生活保護などの社会保障給付で低所得層に還元する「所得再分配」が、逆に貧困の拡大を招いている現実がある。

 政府による所得再分配の前と後で、貧困率がどれくらい下がったかを示す「貧困削減率」という指標がある。経済協力開発機構(OECD)の09年の分析では、各国は再分配後に貧困率を20~80%削減しているが、日本だけが唯一、共働き世帯やひとり親世帯で、貧困率を8%増加させていた。

 所得再分配が正常に機能していないのは、高所得層に優しく、低所得層に厳しい税制が大きな原因だ。80年代は70%だった所得税の最高税率を40%前後まで下げた。90年代後半から法人税も繰り返し下げ、年間10兆~20兆円規模の税収を放棄する一方で、消費税や社会保険料の引き上げで低所得者に負担を強いてきた。日本はOECD諸国の中で、税の累進性が最低レベルだ。

 こうして見ると、子どもの貧困は政府がつくり出してきたと言える。

 正規、非正規労働者の賃金格差をなくすため、「同一価値労働同一賃金」の原則を徹底し、最低賃金を上げる。配偶者控除のような高所得層を優遇する制度は撤廃する。所得税の最高税率を引き上げる。子どもの貧困を解決するため、政府が取るべきはこうした政策だ。

 ▼貧困率と所得再分配 平均的所得の半分に満たない世帯で暮らす子どもの割合を示す「子どもの相対的貧困率」は2012年時点で過去最高の16.3%。貧困ラインは、日本では生活保護ラインにほぼ相当するとされている。

 経済協力開発機構(OECD)の調査では、働いているひとり親の相対的貧困率は日本が突出して高く、約60%。子どもの貧困率が日本より高い米国でも約35%で、デンマークなどの北欧諸国は3~5%だ。1人で家計を支える親の賃金の低さや支援の乏しさを物語る。

 所得再分配政策が正常に機能しているかどうかを示す「子どもの貧困削減率」は主要18カ国中、日本は唯一のマイナス。1980年代から一貫して再分配後に貧困率が上がっている。イタリアなども80年代はマイナスだったが、プラスに改善した。

以上。

 

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