DNAは染色体内で不規則に折り畳まれて存在している

DNAの細胞内での状態は、染色体を構成する最小基本単位のヌクレオソーム線維がらせん状に規則正しく折り畳まれて、直径約30nmのクロマチン線維を形成、このクロマチン線維がらせん状に巻かれて100nmの線維を形成、次に200-250nm、さらには500-750nmと、規則正しいらせん状の階層構造を形成するというのが定説とされていました。

しかし、そのような規則的な折り畳み構造は試験管内の特別な条件でのみ成立するものであり、生体内の条件下では、染色体のような大きな構造を作るために不規則に折り畳まれていることが確認されました。
従来の定説のようなしっかり束ねた構造を作るには大きなエネルギーを必要とするので、最小限の秩序を保つ構造だけを作る方が合理的であるという見方もされています。

教科書に掲載されている定説も、新事実の発見とともに塗り変えていく必要があります。

◇生命の設計図DNAは、不規則に折り畳まれる性質をもつ!リンク
<国立遺伝学研究所>より
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国立遺伝学研究所の前島一博教授、米国コロラド州立大J. Hansen教授らのグループは、人工的に作成したヌクレオソームを国立研究開発法人理化学研究所(理研)の大型放射光施設スプリング8の理研構造生物学Iビームライン(BL45XU)の強力なX線を用いて、構造解析しました。ヌクレオソームを様々な塩(イオン)濃度の条件下で観察したところ、教科書に載っている規則的な構造は試験管内の特別な条件下(低塩) でしか作られないことが分かりました。そして生体内の条件下では、ヌクレオソームは染色体のような大きな構造を作るため、不規則に折り畳まれる性質を持っていることを明らかにしました(図)。

 全長2メートルにもおよぶ長いヒトDNAは細い糸が「ヒストン」タンパク質に巻かれて「ヌクレオソーム」を作ります。1980年代から生物学の教科書では、このヌクレオソーム線維が規則正しく束ねられて「クロマチン線維」となり、更なる階層構造ができ、細胞のなかに収納されている様子が図示されてきました。2012年、前島教授らは規則正しく束ねられたクロマチン線維は存在せず、不規則に凝縮した状態で細胞のなかに収められていることを突き止めました。さらに、今回のDNAの不規則に折り畳まれる性質の発見によって、教科書に長年にわたって記載されてきた「規則正しいクロマチン線維」の改訂が進むことも期待されます。また今回の成果は、必要な遺伝情報が細胞の中でどのように検索され、読み出されるのかを理解するうえでの手がかりになります。
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【参考】
◇不規則な収納が生む自由<生命誌ジャーナル>
リンク
※2012年にクロマチン線維が存在せずヌクレオソームが不規則に凝縮して収められていることが観察で確認されたときの概要

 

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