自然農法・・・無農薬には農薬よりも危険な薬品を使ってる??本当だろうか??

前回の記事「安全のための無農薬なんて『馬鹿のすること』?」では、無農薬農家の4つのタイプを挙げました。

 (1)農薬を危険だと考え、安全な農作物を作ろうとする農家
(2)高収益を得る手段として無農薬を選択する農家
(3)自分の栽培スキルを高めようとする農家
(4)生き方、ライフスタイルとして無農薬を選ぶ農家

 この4種類はあくまで便宜的な分類で、(1)と(4)とか、(2)と(3)を併せ持つような農家も少なくありませんが、無農薬と聞いて一般に連想されるのは(1)の無農薬農家でしょう。しかし、(1)の無農薬農家が、農村では一番嫌われてしまうのです(その理由を前回の記事でお話しました)。

 消費者としては、やはり多くの人が(1)の無農薬農家が育てた作物を口にしたいと思うことでしょう。けれども、実際にはこの4タイプの中で一番危険な作物を作るのが、これもまた(1)のタイプの無農薬農家なのです。

 なぜそう言い切ることができるのか?  今回はその理由をお話したいと思います。

■ 農薬でなければ安全なのか? 

 (1)のタイプの無農薬農家が一番危険な作物を作る理由は簡単です。(1)のタイプの無農薬農家は、「農薬さえ使わなければ安全が確保できる」という単純かつ間違った考え方をしているからです。農薬を使うより危険な資材を使っていても、その自覚がないのです。

 安全性についてまず見なければならないのは、毒性の強弱であり、農薬か否かではありません。

 無農薬農家がよく使う防虫資材に「ニコチン液」があります。ご存知の通り、ニコチンはタバコに含まれているので、タバコの吸い殻を集めて水に浸けておくと、ニコチン液ができます。

 ニコチンはほぼ全ての生物に毒性を持っており、経口摂取(口から入れて食べる場合)のLD50
は3.34~50mg/kg(※)です。「LD50
」とは「半数致死量」(50% Lethal Dose、略してLD50
)で、物質の急性毒性を示す指標の1つです。体重1キログラム当たり、これだけ摂取すれば2人に1人が死ぬ毒性を意味します。仮にLD50が10mg/kgの物質であれば、体重50kgの人が500 mg摂取した場合、2人に1人が死に至る毒性を持つ物質ということになります。したがって、数値が大きくなるほど安全性が高くなります。 ただし実際は、実験動物による投与でその数値を出しているため、実験動物や投与方法によっても数値が異なります。ここでは、神奈川県の化学物質安全情報システム(kis-net)のデータベースから数値を引用します。

※ニコチンの急性毒性:LD50
は投与した実験動物の半数が死亡する量
マウス(経口)LD50
 3.34 mg/kg
イ ヌ(経口)LD50
9.2 mg/kg
ラット(経口)LD50
 50 mg/kg また、他にも無農薬農家がよく使うものとして「木酢液(もくさくえき)」がありますが、これは毒性評価ができません。なぜなら木酢液は何百何千種類もの物質の集合体で、簡単に毒性を判断できないからです。

 分かっているのは、そうした物質の中に「農薬様(のうやくよう)物質」と呼ばれる、農薬のような構造や毒性を持つ物質が多数含まれているということだけです。もちろん読者諸兄がコップ一杯分飲んだりしたら命の保証はありません。

 そんな、下手な農薬よりはるかに危険な猛毒を使っているとは知らず、農薬じゃない“自然農薬”だから安全だと思っている盲目的な無農薬農家は(1)のタイプに多いのです。

■ 農薬の大半は「普通物」

 では現在、日本で流通している農薬の毒性はどの程度かというと、上記に挙げた化学物質に相当する「毒劇物」は15%程度で、あとは全て「普通物」と呼ばれる毒性が低いものです(参照:住友化学HP 農薬製品の毒性別生産比率より)。

 一般によく使われている農薬の中で、比較的毒性の強いものとしては、「スミチオン」の商品名で知られる有機リン・有機硫黄系殺虫剤のフェニトロチオン(MEP)があります。

 フェニトロチオンのLD50
はラットで250、モルモットで500、マウスで715(いずれも経口摂取、単位はmg/kg)。同じラット(経口)で比較しても、ニコチンのLD50
は50mg/kgですから、少なくとも5倍はニコチンより安全と言えます。 そして多くの農薬は、これよりも安全性が高くなっています(誤解のないように言っておきますが、スミチオンは「普通物」の扱いで、農薬としては極めて長い50年以上の使用実績があります。安全性に問題があれば、ここまで長きにわたって使われたりはしません)。

 http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160219-00046089-jbpressz-ind

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