インフル薬“異常行動”めぐり厚労省が「施錠」など通知へ TBS News 2017/11/23
インフルエンザの治療薬を飲んだ子どもなどが「異常行動」を起こす報告があとを絶たないことを受け、厚生労働省が近く「部屋に鍵をかける」といった具体的な対策を呼びかける方針を決めたことがわかりました。
厚生労働省によりますと、タミフルやリレンザなどのインフルエンザ治療薬を飲んだあと、急に走り出した、部屋から飛び出そうとしたといった異常行動の報告が昨シーズン54例ありました。いずれも薬との因果関係は不明です。
厚労省はこれまで、「薬を飲んだあとの2日間は子どもを1人にしない」よう呼びかけていましたが、異常行動の報告があとを絶たないことから、新たな通知を出す方針を決めました。
新たな通知では、部屋に鍵をかける、飛び出しや飛び降りを引き起こす環境に子どもを置かないといった具体的な対策を呼びかけることを検討しています。
このニュースを読んで、「まだタミフルって日本で処方されてたのか!」と驚きましたが、すでに積極的に処方されているのが「全世界で日本だけ」という状況になりつつある中で、今年も日本においては処方が続く可能性がありますので、少し関係したことを書いておきたいと思います。これに関して、日本は異常事態に陥っています。
■「タミフルと異常行動の因果関係はわかっていない」は現在ではあやまち
まず最初に書いておきたいのは、先ほどのニュースの中に、
「薬との因果関係は不明」
というくだりがありますけれど、これに関していえば、3年前に決着はついていまして、「タミフルと異常行動には明らかな関係がある」と断定して構わないはずです。
この評価をおこなったのは、イギリスに本部を置き、臨床試験をくまなく収集し、評価・分析する国際的な医療評価機関『コクラン共同計画』です。
コクラン共同計画は、世界で最も権威のある医学誌『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)』と共同で 2014年に発表した声明で、
「インフルエンザ治療薬タミフルの効果は限定的であり、医療機関に対して使用指針の見直しを求める」
としたのです。「使用指針の見直しを求める」というのは、つまり「なるべく使わないようにしてほしい」という通達となります。
その声明のオリジナルは、こちら(英語)にありますが、簡単に書きますと、臨床調査で、民船の効果と「安全性」については以下のようだったということがわかったのです。
コクラン計画と BMJ が発表した内容
[タミフルの効果]
・成人の場合、発症期間が 7日 → 6.3日と 0.7日短縮
・未成年では発症期間短縮の効果は見られなかった[タミフルの安全性]
・吐き気と嘔吐 → 成人で 4%、子どもでは 5%に見られた
・頭痛 → 3.1% に見られた
・精神症状 → 1.1% に見られたというものです。
つまり、効果としては、
大人の場合、服用しないより 16時間ほど早く症状が治まるという部分だけが効用といえそうで、しかし、子どもの場合は、
「効果がないだけではなく、嘔吐、頭痛、精神症状の副作用《だけ》がある薬剤」
であると確認されたということになり、タミフルは、少なくとも子どもにとっては「益ではなく害だけがある」という存在だといえそうです。
特に、
「 1.1%に精神症状があらわれた」
という副作用は重大なものだと思います。
たった 1%といいますけれど、
・100人に処方されれば 1人
・1万人に処方されれば 100人
・100万人に処方されれば 1万人の「精神に症状が現れる」わけです。後述しますが、日本には多い年には、ワンシーズンに「 900万人分近くのタミフル」が出荷されています。
精神症状は軽い場合も重い場合もあるでしょうけれど、冒頭の報道にある、
> インフルエンザの治療薬を飲んだ子どもなどが「異常行動」を起こす報告があとを絶たない
ということに直結していると思われます。
しかし……それよりこの問題は、別の部分にもあると思わざるを得ません。
それは「人間としての良心」の問題にも関わることかもしれないですが、誰かを非難したいわけではないですので、あえて書かせていただけば……うーん……どう書けばいいでしょうか。
……たとえば、先ほど、イギリスのブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(以下、BMJ と表記します)という医学誌にふれましたけれど、その BMJ という雑誌は、Wikipediaには、以下のように記されています。
国際的にも権威が高く、日本でも医師であれば必ず読んでおくべき雑誌と言われている。
とあり、
> 医師であれば必ず読んでおくべき
とあるということは、先ほどのコクラン共同計画との共同声明であるこの「タミフルの安全性」について、特に西洋の医学情報をよく学んでいる多くの医師たちは、「タミフルを服用すれば 100人に 1人に精神症状が出る」という数値を「知っている」はずで、冒頭の指針を出していた厚生労働省の人たちも「知っている」はずです。
私のような素人でも知っているのですから、専門家の多くは、少なくとも「そういう情報があった」ことは知っている。
そして、その内容はコクラン共同計画と BMJ が明らかにしたように、
「タミフルにインフルエンザ治療薬としての効果はない」
という結論だったわけです。
そのことも多くの専門家たちは知っている。
それでも、医師たちの団体も厚生労働省も保険関係の機関もガイドラインを変えない。
本来なら「効果がない」と明らかにわかったのであれば、「服用した際の注意の指針」等を出すのではなく、「処方そのものに関してのガイドライン」か「規制」に踏み込むのが妥当なのではないでしょうか。
害だけがある薬物であることが明確なのに、それを知っているかもしれない医療者たちが「子どもにも」出し続けている。何十人も、あるいは何百人もの十代の若者たちが事故に陥っているのに。