正常なタンパク質をつくるには十分な亜鉛が必要
体内で正常なタンパク質を合成することはとても重要であり、逆に言えば、形が異常なタンパク質を合成してしまうと体調不良や何らかの疾患に陥ってしまいます。
体内で合成されるタンパク質の設計図はDNAに書かれています。DNAは核の中で設計図などの情報を保存し、RNAによってその情報が転写され、アミノ酸が結合し、タンパク質が生成される仕組みになっています。
このDNAの複製を促進するポリメラーゼという酵素は最も古くからあるものだと言われています。この最古のタンパク質の一つ、ポリメラーゼ酵素は亜鉛が必須です。さらにポリメラーゼの働きを助けるジンクフィンガータンパク質にも実は多くの亜鉛が含まれています。
RNA合成(重合)を促す酵素にも亜鉛が含まれています。
この起源の古い酵素であるポリメラーゼには、そもそも、なぜ亜鉛が使われているのでしょうか。
それは亜鉛の結合力の強い性質を利用しているからです。一般に、酸性度が強いものは、結合力が強いのです。
酸性度の強さ = 結合力が強い
では、金属を酸性の強さの順に並べてみましょう。
Cu2+ ≧ Zn2+ > Ni2+ > Co2+ > Fe2+ > Cr2+ > Mn2+ > V2+ > Mg2+ > Ca2+
これを見る限り、亜鉛より銅の酸性度が強いため、銅が使われていもよさそうですが、生命誕生前では銅はまだ海水中になかったため、亜鉛を使ったとされています。
このように、亜鉛欠乏の状態では、DNAの複製やRNAの重合に支障をきたしてしまい、正常なタンパク質が作られなかったり、細胞の突然変異を誘発してしまうおそれがあります。
さらに、上記の亜鉛より結合力の強い金属が銅以外にあります。それが水銀やカドミウムのような重金属です。
Hg2+ > Cd2+ > Zn2+
よって、水銀曝露やカドミウム曝露が多量にあると、酵素活性の中心となる亜鉛と置換し、正常な働きが阻害されます。
以上のように、十分量の亜鉛が体内にあれば、きちんと正常なタンパク質(酵素)が生成されることがわかると思います。