【牛乳 危険】ヤギミルクが人によく合う理由

ヤギミルクが人によく合う理由

乳製品というとほとんどが牛由来のミルクを想像してしまいますが、ヤギミルクはやはり別格でヒトに最も合った乳製品といえます。

一般に、重度な鉄欠乏者に乳製品の摂取は勧められませんが、ヤギミルクはむしろ鉄欠乏の改善・回復を促進します(Díaz-Castro J et al., 2015)。

今日はその理由をまとめてみたいと思います。(ただし、これも合う合わないもあるので、ここは慎重に。。)

ヤギミルクの摂取は生体の貯蔵鉄を回復するということで近年注目されています。鉄欠乏者に牛乳を勧めない理由の一つに、乳カルシウム(Ca)による鉄(Fe)吸収の阻害が挙げられます。

吸収機構においてCaとFeは拮抗作用があります。これは栄養学ではよく知られている事実です。乳中に含まれる鉄は、非ヘム鉄(Fe3+)ですが、この非ヘム鉄は小腸の上皮細胞にある刷子縁(さっしえん)という微絨毛が密にある部分において、還元酵素Dcytbによって、いったんFe2+に還元され、DMT1という専用の吸収窓口から取り込まれます。実は、このDMT1という吸収の輸送体は、鉄だけでなく、カルシウム(Ca2+)も吸収できるのです。(Biochem Biophys Res Commun. 2010 Mar 12;393(3):471-5.)

よって、乳中CaはFeの吸収を競合的に阻害し、Feの生体利用率を低下させます(Shawki and Mackenzie,2010)。

ところが、興味深いことに、ヤギミルクは牛乳と違い、このCa-Feの拮抗作用を最小限に抑え、Feの吸収を改善することがわかっています。さらに、牛乳と比べると、鉄、亜鉛、マグネシウムなどのミネラルがより多く含まれ、その生体利用率も高いです。

一般に、貧血になると副甲状腺ホルモン濃度が上昇してしまいます。副甲状腺ホルモンが高くなると、骨からカルシウムの脱灰が亢進されます。実際に、動物実験でも、貧血により脱灰が亢進したラットに、ヤギミルクを与えたグループと、牛乳を与えたグループに分けた結果、ヤギミルクのラットは10日以内に骨の修復と改善が見られました(このとき、余剰の鉄補給は行っていません)。一方、牛乳のほうのラットは改善が見られなかったことが報告されています。また、骨髄での造血でも、ヤギミルクの方が、牛乳を与えたグループよりも早く改善されています。

貧血ではコルチゾールという抗ストレスホルモンのレベルも高くなります。貧血では、エネルギー産生に使われる酸素を運ぶ赤血球が少なくなるため、コルチゾールを使って血糖を高め、赤血球を増やそうとするからです。しかし、コルチゾール分泌が亢進すると、副腎が疲弊し、うつ症状を伴うため、貧血の治療では、このコルチゾールをいかに低く戻すかが重要なポイントとなります。そして、ヤギミルクを与えたグループでは、このコルチゾールが正常に減少させたことが報告されています(Campos et al., 1998, 2007)。

最後に、ヤギミルクに含まれる脂肪とたんぱく質についても書いておきます。

ヤギミルクは海外では「カプリンミルク」と呼ばれています。これは、ヤギ乳にカプリン酸という「中鎖脂肪酸」が多いからです。ヤギミルクの乳脂肪はこうした中鎖トリグリセリドが豊富に含まれており、体内に入ると急速に吸収され、代謝されていきます。そのため、エネルギー産生が早く、輸送タンパクの合成を増加させ、これによってFeの吸収と各臓器への鉄沈着が高まると言われています。脂肪球も大きさも牛乳と比べて小さいので消化しやすいことも特筆すべきことでしょう。また、ヤギミルクは、ビタミンAとビタミンCの含有量が高く、これらの栄養素はFe吸収を高める性質があります。

牛乳に含まれるカゼイン(正確に言うとカゼイン由来のペプチド)は鉄の吸収を阻害します。牛乳のカゼインたんぱくは、α-s1-カゼイン、βカゼインです。フランスの報告(2005)では、α-s1-カゼインがβカゼインよりも鉄の取り込みと吸収を大きく阻害します。また、これはアレルギー物質となりやすいカゼインでもあります。ところが、ヤギミルクにはこのα-s1-カゼインがほとんど含まれていません。ちなみに、母乳にもこのカゼインは含まれていません。

以上のように、乳製品は鉄の吸収阻害作用があるといわれていますが、それは牛乳由来のもので、ヤギミルク(およびその加工品)はむしろ鉄の吸収を高め、脂質もタンパク質も人によく合う良質なものだといえます。

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