確認された「永久の生命」、不死の微生物“ヒドラ”

ヒドラという生物は、自分の体を更新し続けることで、永遠の命をもつことが研究でわかった。
外敵からの捕食、海水汚染などにより野生環境で永遠に生きるチャンスはほぼ無いですが、もし人間に応用できれば、永遠の命が手にはいるかもしれません。

いくつかの生物に不死の可能性があることについての強力な証拠となり得るかもしれないが、12月7日に発表された全米科学アカデミー紀要( PNAS )に発表された共著論文によれば、小型ヒドラには「年齢がない」ことが確認された。

理想的な状態に保たれている場合は、ヒドラは永遠に生きる可能性がある。

ポモナ大学の生物学教授ダニエル・マルティネス( Professor Daniel Martínez )氏は、これらの数センチメールの淡水ポリープについて、その長寿の秘密を探るために、これまで 10年以上に渡る研究を続けてきた。

全米科学アカデミー紀要に発表された論文『ヒドラの年齢を越えた一定の死亡率と生殖能力』( Constant mortality and fertility over age in Hydra )では、ヒドラは理想的な条件に住んでいる場合、死亡率の上昇や加齢に応じた生殖能力の低下などの老化の兆候を示すことがないことが述べられている。

これまで、老化は、すべての多細胞生物において避けられないものと考えられていた。

最新の研究では、密接に関連する2つの種から 2,256匹のヒドラを対象とし、ポモナ大学と、ドイツのマックス・プランク人口研究所( MPIDR )の2つの研究室で実験が行われた。

この研究は、マルティネス教授が以前続けた4年間の研究の倍の8年間の時間をかけて続けられた。

マルティネス教授は、この研究により「個々のヒドラは、適切な状況の下では永遠に生きることができることを確信しました」と述べる。

「もっとも、野生環境で生きているヒドラは、常に外敵からの捕食、海の汚染、病気などの危険にさらされているので、永遠に生きるチャンスは低いです」

「私はもとはといえば、今回の結果の反対の証拠を求めて、この実験をスタートしました。つまり、ヒドラもまた老化から逃れることはできないということを証明したかったのです。ところが、私の研究のデータは、その私の考えが間違って居いることを示しました。ヒドラは老化しなかったのです」

ヒドラの研究と老化の進化に関する世界有数の学者のひとりとして、マルティネス教授は、ヒドラ属が老化しないことに関しての研究のために、アメリカ国立衛生研究所から 120万ドル(約 1億4000万円)の研究助成金を受けた。

2013年には、やはりヒドラの研究で、カリフォルニア大学リバーサイド校の不老不死プロジェクト( The Immortality Project )から助成金を受けている。
マルティネス教授が、生物の不死に興味を持ったのは 1990年代にまで遡る。ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の大学院にいた時、マルティネス教授は、ヒドラが不死である可能性を持っていることを聞いた。

しかし、誰もそれが本当なのかどうかの研究をおこなっていなかった。

「私が大学院でヒドラの実験を始めたとき、当時は、すべての動物は老化から逃れることができないというのが定説で、また、すべての動物がそうでなければならないとされていました」と、マルティネス教授は述べる。

「私が研究を始めた時、私は、ヒドラも老化するということを証明したかった。しかし、研究を始めてから4年後、ついにヒドラの死亡を検出しなかったのです。私は、ヒドラは加齢しないと確信し、1998年に論文を書きました」

マルティネス教授のこの論文は、国際的な注目を集めた。

「私のこの発見は、すべての動物が老いるという考えに再考を促しました」

「研究前は、どんな動物も老化から逃れることはできないだろうということを予測していたのですが、研究結果は、それらの定説の妥当性に疑問を呈することになったのです。」

マルティネス教授の研究は、ドイツのマックス・プランク人口研究所からの注目を得た。そして、2004年に人口研究所は、ポモナ大学との研究の連携と資金調達を提案し、教授のヒドラの寿命の研究が継続されることになった。

1998年の論文には、ヒドラの生殖能力などの決定について、至らない点があったとマルティネス教授は述べる。

それから 10年以上の研究の後に、ふたつの研究所によって書かれた共著論文で、マルティネスの初期の研究結果である「ヒドラは不死」ということを確認したのである。

それにしても、なぜ、この小さな生きものたちは、永遠に生きられるのだろう。人間は、いまだに老化から逃れることはできないというのに。

マルティネス教授は以下のように述べる。

「ヒドラが幹細胞から作られているのです。ヒドラの体のほとんどは、非常に少数の完全に分化した細胞と幹細胞で構成されています」

「幹細胞は、継続的に分裂する能力を有します。そのためヒドラの体は絶えず新しく更新されているのです。触手と足の分化した細胞は、常に身体から切り離され、体の各所は新しい細胞へと置き換えられるのです」

そして、マルティネス教授はこう加えた。

「私が望むのは、この研究が、他の科学者たちが不老不死の研究を支援するものとなってくれることです。ヒドラだけではなく、他の生物を含む老化の謎の解明への一歩となればいいと思っています」

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